ひかりテレビでアランドロン主演の『太陽がいっぱい』を視聴した。これはアランドロンの出世作である。この映画の成功をもとに、彼は一躍世界のアランドロンになってゆく。

私がこの映画を見たのは、これが始めてだ。今までは、舞台が南フランスかと思っていたら、実際に映画を見たらイタリアが舞台であった。映画の中で随所にイタリアの美しい風景が現れる。当時の人々の暮らしが見える。それはこの映画の魅力の1つである。

『太陽がいっぱい』の原題はPlein soleil である。この原題をみると、カミュの『異邦人』の中で、裁判の時に、何で殺したのかと質問された時に、c’était à cause du soleil.(太陽のせいだ)と答えて人々の失笑をかった、という場面を思い出す。カミュの作品では、アルジェリアが背景である。私見だが、この映画とカミュの作品には、ある程度の繋がりがあるのでは、と思っている。

さて、アランドロンのこの映画だが、友人の婚約者マルジェ(マリーラフォレ)の美しさも魅力の1つである。それから、哀愁を帯びたテーマ曲も素晴らしい。

さらには、トムが策略を巡らして完全犯罪を試みる姿に共鳴を覚える人も多いだろう。完全犯罪すれすれまに達して、財産とマルジェの両方を手に知れようとした矢先に、遺体を包んだ縄がヨットの後尾に絡まっていて、トムの奸計が露わになってしまう。

そんなこととは知らない彼は太陽を浴びながら、Bien! と満足気につぶやく。次の瞬間には地獄に真っ逆さまだが、その場面は映し出されない。警察から依頼された女性が、「電話ですよ」と叫ぶところで場面は終わるのだ。