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村上春樹の『国境の南、太陽の西』の独訳本 Südlich der Grenze, westlich der Sonne (2013) Dumont を読み始まる。村上春樹の原本の独訳は2種類がある。一つは、Giovanni Baldini und Ditto Baldini による英語からの重訳であり、タイトルは Gefährliche Geliebte である。

もう一つは私が今読んでいる訳で Ursula Gräfe によって訳された、タイトルは日本語の原文そのままの Südlich der Grenze, westlich der Sonne である。

前者の訳は批判されたそうで、その批判を受けて後者の訳が日本語から直接に訳されたそうだ。前者の訳の方が分かりやすそうだが、英語からの重訳という点が私も気になる。そんなことで、Ursula Gräfe による訳文を読んでいる。

なお、私はこの本は英訳と仏訳で読んだことがあるが、日本語の原文は読んでいない。この物語は大好きなのだが、美人をあまり近くで見たくないという感じと似ている。やや離れたところから、美人を見て、はっきりとは分からないが、どんなに素敵な人だろうか、と勝手な想像をする方が好きなので、あえて日本語の原文は読んでいない。

さて、この物語の一つの謎は、Shimamoto さんが実在したのか、という点だ。もちろん、小学生時代の Shimamoto さんは実在するが、のちになり、Hajimeが出会った Shimamotoさんが彼の幻影であり、想像が生み出した産物ではないかという疑問がよく出されている。

そんなことで、注意深く読むと、Shimamoto さんが実在しなくて、彼の記憶だけに存在することを各所で暗示している。

彼女の言葉、(p.18) Es gibt Dinge, die sich nicht mehr rückgängig machen lassen.  Man kann die Zeit nicht zurückdrehen.  Ist man einmal an einem gewissen Punkt angekommen, gibt es kein Zurück mehr.  過去は戻れない、という彼女の言葉は、中年になって Hajime が時計の針を戻そうとしているが、それは虚しい行為であることをここで伏線として述べている。

Viele Jahre lang räumte ich ihr einen besonderen Platz in meinem Herzen ein.  Ich hielt ihn für sie frei, so wie man ein Schild mit der Aufschrift >reserviert< auf einen ruhigen Tisch in einer hinteren Ecke eines Restaurants stellt. (pp.21-22)

ここに秘密が全て現れていると思う。Shimamoto さんは、彼の Herzen のeinen besonderen Platz にいたのであり、そしてreserviert されたいたのである。それは非常に大切であったが、彼のHerzen の中だけに存在するのものであったのだ。

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