2014-08-25

いくつかの頻出する語がある。sang, colombe, blanch, lune, rouge, peur, venin, lis, ivoireなどである。これらの語にある程度は親しんでおくことが Wilde 理解に必要のようだ。

見事な舞をしたサロメに王が褒美を取らせようとする。それに対して、サロメは La tête d’Iokanaan を要求する。王は何とか翻意させようとして、no.675 あたりから、美しい宝石を色々と(そして長々と)説明してサロメを翻意をさせようとしている。これらの宝石に関する知識はWildeの直接的な知識に基づいているのか、それとも宝石の説明書からの知識だけなのか。これが、firsthandでの知識であれば、これは凄いと感嘆せざるをえない。

サロメはお盆に置かれたヨハネの首に対して次のように言う。Ah! tu n’as pas voulu me laisser baiser ta bouche, Iokanaan. Eh bien! je la baiserai maintenant. Je la mordrai avec mes dents comme on mord un fruit mûr. (no.710) これはとても私の趣味ではない。勘弁して欲しい。ふと、『赤と黒』でマチルダが処刑された主人公ジュリアンソレルの首をもらい受ける場面を思い出した。

le mystère de l’amour est plus grand que le mystére de la mort. (no.730) 「愛の神秘は死の神秘よりも大きい」とあるが、瞬間的にヨハネスを見て、その肉体に恋をして、死をも要求するほどの恋心に燃え上がるものか。とにかく、この戯曲は内容が分かりづらい(フランス語は分かりやすいのだが)。私の趣味ではないので、採点は65点としたい。なお私のメモを見ると、2014年01月16日にkindleの独訳でSalomeを読んだが、「あまり面白くない」との似たような感想を述べてある。

なお、なぜOscar Wildeがフランス語で書いたのか不思議に思っていたら、ネットでの説明を見つけた。「オックスフォード便り」 (http://oxfordn.exblog.jp/9018003) によれば、「ワイルドがフランス語を採用した最大の理由は、フランス語では女性形が使用でき、女性の感情を音韻の面からも「ことばに」最大限に盛りこむことができるからであろう。サロメの台詞は大部分が女性形で書かれている。男性形と対立するように、当然もくろまれている。」とのことである。ふーん。いずれにせよ、彼のフランス語は分かりやすく初学者の教材には最適かもしれない。内容はちょっと問題だが。。。。