Ross Macdonald のFind a Victim (Vintage Crime)を読んだ。数日前に彼の Doomsters を読んだが、雰囲気的には似ている。ともに、思いがけない人が犯人であり、その犯人に至るまではかなりのアクションがある。テンポがよくて展開が早い。読者は主人公である Lew Archer の視点から展開を見ていくことになる。

アメリカの小さな町での出来事、Archer はちょうど殺人の現場に出くわす。毎回、タイミングよく殺人の場面にであるのだが、このあたり不自然な感じもする。そして、彼がゆくところはすべて、新しい情報が得られる。何気なく話した人が必ず事件解決のヒントをくれたり、目撃の情報をくれる。彼のミステリーに限らず、ハードボイルド小説の特徴は動きがあってテンポがいいことだ。本当はこんなにタイミングよくは進まないのだ。何回もいろいろな人に話をして、100人に声を掛けて、そのうちの一人ぐらいが有益な情報をもたらしてくれるのだが、その100人の話しをのせていたら、ミステリー小説は大変な分量になり、読者には退屈な話になる。

その意味では、探偵小説の約束事として、出会う人がすべて問題解決のヒントを提供してくれるということは当然である。ただ、ミステリーの場合でも、ある程度は無駄に終わった調査も記述していかないと、本当らしさが生まれない。すべて、とんとん拍子に話しが進むのは、これは問題である。

さて、Ross Macdonald の特徴として、ある家族の抱えるくらい闇を暴き立てる小説を書く。あることが出来事で、狂気に至る人物がでてくる。それらの人物の描き方が絶妙である。それらを読むことで、読者は愛や憎しみや孤独など登場人物が抱えた問題を理解できるであろう。読むことで自分自身に投影できたりして苦しく感じることもある。