014-09-02

第92話 Der König vom goldenen Berg を読んでみる。へんてこな話だと思う。いろいろな話が混ざっていて、首尾一貫性がない。冒頭では、Ein Kaufmann, der hatte zwei Kinder, einen Buben und ein Mädchen, とあって、ヘンゼルとグレーテルのように兄(主人公)と妹の互いに助け合うお話と思ったら、妹はこれ以降はいっさい登場しない。あるいは、父と息子の別離と再開の物語かと思うと、そうでもないようだ。

主人公があるお城にゆく。蛇の姿にかえられた王女を救うために、言葉を何も発しなければ姫に掛けられた魔法を解くことができるという(no.5819)。無事に試練を乗り越えて、首を切られたりするが、のちに復活する。 死と再生の構造が見えてくる。ユングやエリアーデはこのような物語を読んで、自分の理論を証明してくれると感涙するのでは思う。主人公はこの王女と結婚して、王様になる。しかし、故郷に帰る途中の失態で、王女のもとに帰れなくなる。しかし、主人公は何とか王国へ戻ろうとする。

主人公は巨人たちと出会う。その時に、巨人たちは次のように言って主人公にアドバイスを求める。kleine Menschen hätten klugen Sinn (no. 5843) 体が大きいと知的能力に欠けるという考えが、日本には「大男総身に知恵がまわりかね」のような諺が示すように、一般的に信じられている。ヨーロッパにも似たような考えがあったので、興味深かった。

王女と喧嘩して、最後は全員が首が地面に転がり落ちる。Da rollten alle Köpfe zur Erde, und er war allein der Herr und war wieder König vom goldenen Berge. (no.5867) 最後は主人公以外は全員が死に絶えるという、後味悪い話である。

3つぐらいの話を強引にストーリー展開も何も考えずに、単にくっつけた話。やはりグリム童話集の中でも人気がある物語はテーマの展開がしっかりしている。