2014-08-13

Colorless Tsukuru Tazaki and His Years of Pilgrimage (by MURAKAMI Haruki, kindle version)を読む。

村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の英訳が8月12日に発行されるという情報が私の手帳に記してある。アマゾンで調べると、12日発刊で、kindle 版ならば紙本の半分ぐらいの値段で入手できるとあった、さっそくダウンロードして読み始める。とても面白い。なかなかやめられなくて、二日ほどで読み切った。さすが村上春樹の小説だけあって、いたるところに読者向けの工夫がしてあった、飽きることなく、ワクワクしながら最後まで読むことができた。自分は彼の作品では『太陽の西、国境の南』が一番好きだが、この本はその次に好きになりそうである。

この英訳本はとても読みやすい。(英語ならばRay Bradburyぐらいでも自分は結構手こずる。)Murakamiの英訳は一般に非常に分かりやすい。一つは現代の日本を舞台にしているので背景が分かりやすいという点があろう。また、訳者のPhilip Gabrielの力量によるのかもしれない。Murakamiはもう一人訳者がJay Rubinがいるが、この人も実力ある訳者との評判である。

さて、彼の道具立ては見事である。色にちなんだ人の名前、フィンランド、陶芸、クラシッック音楽(リスト)、高級レストラン、6本指、突然消え去る友人の灰田など、である。ただ、他の作品でもこれらの道具は同じことが多い。例えば、高校生の時は名古屋や神戸にいても、大学は東京へゆく、そして古い友達とは疎遠になる、というパターンはよく出てくる。

アマゾンで日本語版の書評を見てみたが、評価は低い。 しかし、英語版は評判になるのではと予想される。独訳版の評価をドイツのアマゾンで見たら、かなり高かった。不思議な作家である。翻訳しても質は低下しない。むしろ読みやすくなり質が高まる。これは彼の作品には普遍性があるからだろう。つまり、日本人以外でもこの主人公に自分自身を投影する事が容易に出来るという点が一番アピールするのだろう。

さて、最後に Sara は主人公の愛を受け入れるのか受け入れないのか。自分はそこを知りたかったが、肝心の点が書いてない。読者の想像に任せるのか。Saraが受け入れる確率は50%ぐらいかな。さて、夏休みはまだある。次は何を読もうか。