2014-06-12

Die Bibel を時々眺めている。Zarathustra と同じぐらいの長さの文が多い事に気づく。語彙の難易度もほほ同じではないか。『影なし男』の文はやたらに長かったし難しい表現も多出したように記憶している。ニーチェは意識的に Die Bibelに似せて、この2冊を「全く異なる双生児」にしようとした、と考えられないか。

ルター聖書についてWilipediaで少し調べてみる。ルター聖書はLutherbibel と称するようだ。1522年からルターの翻訳が少しずつ公刊されていく。ルターの最後の修正は1545年とのこと。その後、何度も当時の学的な研究成果を取り込んで改訂されていく。

ニーチェの生年は1844年であり、Zarathustra の執筆は1883年から1891年にかけてである(なお、ニーチェの没年は1900年である)。ニーチェが読んだと思われる聖書は1861年版か1863年版ではないか。それ以前はかなり古い Lutherbibel が普及していたようであり、ニーチェはそちらを通常は読んでいたかもいれない。おそらく、ニーチェが何年版の聖書を読み込んでいたかについては、たくさんの研究があるだろう。いま、私が kindle版で持っている Lutherbibel はニーチェの読んでいた版といくつかの違いがあるようで、Zarathustraとkindle版の聖書の両者を比較して何々だ、と軽々しくは言えない事も調べていくうちに分かった。

Ich liebe den, welcher… というパターンの表現がたくさん出てくる(no. 432)。脈絡から切り離して、それだけを読んでも含蓄ある表現と思われるものもいくつかある。しかし、これらを全体を集めると何が言いたいのか作者の意図は見えなくなってくる。第一部は10日ほどで書かれたとの事、一見すると「変なおじさんの戯言」のようにも思えるが。

とにかく、現時点で分かったとこは、主人公は超人ではないが、超人がくることを説いていることである。人間は超人への橋渡しであると説いている。主人公は福音書におけるイエスのような役割ではなくて、超人の到来を告げる預言者の役割を果たすという点が一つの違いか。