2014-05-29

ネットを漁っていたら、北海道大学の藤本純子氏の論文を見つけた。タイトルは「Wilhelm Hauff の三つのMaerchenalmanach についてーMaerchenの行方を追ってー」である。1983年に刊行された『独語独文科研究年報』の中の論文とある。eprints.lib.hokudai.ac.jp/dspace/bitstream/2115/25623/1/9_P1-19.pdf ネットの時代は便利だとつくづく思う。このような論文が無料で読めるのであるから。

Hauff の童話集について、枠物語そのものがどのような意味を持つか私は分からないので、この論文を読む事でいろいろと勉強になった。いくつかコメントをしていきたい。

(1)この論文は Sabine Beckmann という学者の論文 “Wilhelm Hauff Seine Maerchenalmanach als zyklishe Kompositionen” (1976) を参考したとある。(ネットでさがすと、この名前の女性は見つかった。しかし、家族問題、ジェンダー論などの論文が多いので、別人であろう。論文自体もネットで探すが見つからない)

(2)Maerchen, Gescichte, Sage の定義についていろいろ論じている。Hauffの定義も示されているが、この辺りは自分には難しくてよく分からない。

(3)登場人物たちの場所が、オリエントから次第にオクシデントへ移行して、ついにはドイツのSchwarzwald が舞台となる。これを意味ある事と論じているが、偶然ではなかろうか。彼岸から此岸へと舞台が移行していると考えるのは強引では?わずか3年の間に Hauff の認識にそのような発展があったとは考えづらいのでは?

(4)第二集では、目次にグリムの童話などがいくつかあげられていたが、最近はそれは省いて出版するのが通例であることを教えてもらった。(私は kindle版の目次にはあるのに、なぜ実際は本文中にないのか不思議に思っていた。要は、他人の作品からの借用(盗用?)であるので、省かれるようだ)

(5)藤本氏はこの枠物語を高く評価している。各つながりが有機的で効果的であると考えているようだ。しかし、私にはカオスしか見えない。(このあたり、ドイツ語の専門家ならば、有機的なつながりと感じる事ができるのだろうが、あらすじを追うのがやっとの自分の力ではカオスしか見えなかった、と言う事になろう。)

このようにいくつかのコメントをする。ただ、私は、この枠物語自体の魅力はあまり感じないが、個々のストーリーには十分に魅力を感じる。20代の若者が種本なしにこれだけの話を3年ほどで書き上げたとしたら、それは天才だと思う。(Hauff の種本について研究した論文を読んでみたい)それから、枠物語自体としてどれくらい成功しているか、アマゾンでドイツ人の人たちのレビューを見て、この点どのような評価されているか調べてみたい。