2014-03-27
Wilhelm Hauff のMarchenを読んでみる。本は子供用の挿絵の魅力的なつくりとなっている。1970年にCarl Ueberreuter社から出された本である。問題は子ども向けに Fur die Jugend aus ewahlt und bearbeitetであることだ。少し読み始めたが何となく違和感があり、オリジナルの版を読むことにした。kindleにオリジナル版が入っているので読み始める。ます、Muckの物語から読み始めた。
しかし、自分は色々つまずく箇所がでてきた。
kindle の Marchen-Almanach auf das Jahr 1826 (no.1144)の箇所で、次のような表現がある。Diesen konnte er nicht wohl leiden, weil er sich seiner Zwerggestalt schämte, und liess ihn daher auch in Unwissenheit aufwachsen. Muckの父は息子が低身長であることを恥じて、との意味だが、seinerがどうして使われるのか分からない。このままの解釈ならば、「自分自身の低身長を恥じて」となるのではないか。つまり、er, sich, seiner の3つの代名詞は同一人物を示すと考えるが自然ではないか。それとも「自分を示す」の場合は、eigener Zwerggestalt となるのだろうか?しかし、辞書などの例文を見ると、Er arbeitet in seiner Zimmer.「彼は自分の部屋で仕事をしている」とあるように主語と同じ人物を指示すると考えるのが普通のようだ。
また、liess ihn daher auch in Unwissenheit aufwachsen の訳だが、「無知のまま育つにまかせた」という意味だが、この仏訳を見てみると、Malheureusement il n’aimait pas cet enfant (kindle版:La Caravane – contes orientaux, no. 1510)とある。こんな訳でいいのかと驚いてしまう。あるいは、父が貧しいことをオリジナルでは、war ein angsehener, aber armer Mann hier in Nicea.では仏訳では、etait un savant distingue, et, quoique peu favorise de la fortune.とある。pauvre と単純に訳したらいいかと思うが、このあたり訳者の考えか。
あと、子ども達がMuckをからかって戯れ歌をうたすが、オリジナルでは、もちろん韻が踏んである。
Kleiner Muck, kleiner Muck,
Wohnst in einem grossen Haus,
Gehst nur all vier Wochen aus,
Bist ein braver, kleiner Zwerg,
Hast ein Kopflein wie ein Berg,
Schau dich einmal um und guck,
Lauf und fand uns, kleiner Muck!
これの仏訳版を見てみると、ちゃんと韻を踏んで訳している。
Monsieur Mouck, Monsieur Moucheron,
Ron, ron,
Est sorti de sa maison.
Pour sa fete
Il est en quete
Il veut s’offiri un potiron,
Le potiron est sur sa tete:
Attrape, attrape, attrape donc
Petit, petit, petit moucheron.
忠実な訳ではないが、それなりに工夫がしてある。とくに、-ron
に韻を踏むために、potiron, moucheronなどの単語を見つけ出して
いるのは訳者がきわめて器用であることを示している。
しかし、オリジナルでは基礎語彙が使ってあるのに、仏訳では基礎語彙だけでは
対応できなかったようで、ここに語調のズレが生じている。