Phantom Lady (Cornell Woolrich, Centipede Press, 2012)を読み終えた。評価は70点ぐらいだ。以下、評価すべき点と評価できない点を述べる。

評価すべき点
(1)文体が格好いい。特に冒頭の The night was young, and so was he.  But the night was sweet, and he was sour. などは有名だ。

(2)目次の付け方が面白い。「処刑の100日前」「処刑の11日前」のような目次は、読者にある種の緊張感を与える。

(3)トリックが奇想天外だ。真犯人は分かりづらい。

評価できない点
(1)伏線が各所にあるのだが、その部分は読んでいて分かりづらい。伏線が回収された後で、なるほどと思うのだが、順番に読んでいくと、「何でだ?」「この部分は何でこんな分かりづらい書き方をするのか?」としばしば疑問に思ってしまう。

(2)動機が無茶すぎる。最初の一人を殺すのはありだが、そのまま何人も連続殺人をするのは不可解だ。

(3)肝心の Phantom Lady が最初はミステリアスに描かれているが、最後は詰まらない女として描かれている。Phantom Lady はある程度は威厳を付けてほしい。たとえば、伯爵夫人とか、豪商の愛人とかというような重みをつける必要がある。


のように、やや辛めの評価をしたい。世人は絶賛している人が多いが、自分はそれほどの評価はしない。なお、英語に関して二つほど勉強をした。

(1)The car arrived and he stepped in.  The heavy bronze door swung closed by itself after him. (p.41) エレベータの箱のことを car と言うことを知った。辞書で引くとアメリカ英語の用法のようだ。cage ともいうそうだ。
(2)Dangling from one ear, but miraculously unbroken, was a pair of dark glasses. “That him?” he muttered.  “It’s him,” agreed Lombard tersely. (p.157) ここで、that と it の使いかたが分かった。
目の前に見えているa pair of dark glasses を that で受けている(目の前の物)。その言葉を it で受けている(文中の語句を受ける)。具体的なもの→that→it という順番だ。


さて、今朝から、同一作家の I married a dead man を読み始める。 最初のページにCaulfield が素晴らしいと書いてある。The stars are warm and friendly here, not cold and distant, as where I came from; they seem to hang lower over us, be closer to us. (p.17) さて、どんな小説か。