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スペルを色々と間違えたので、Matthias は弁解か開き直りで次のように言う。Es ist mir, offen gestanden, auch ganz egal, wie man Provinz und Proviant und Karussell schreiben muss.  Ich werde später mal Boxweltmeister, und da brauche ich keine Orthographie. (p.42) ボクシングの世界チャンピオンになるので、スペルなど覚える必要はない、と言っているのだ。

この文では、Kästner はメタ言語として使われる部分はイタリックか引用符号を使用してほしい。そうでないと、地の文に埋め込まれて何が何だか分からなくなる。wei man Provinz und Proviant und Karussell schreiben muss. のように表現してほしい。

offen gestanden だが、熟語で「率直に言えば」の意味である。ganz egal は「どうでもよい」の意味である。この二つの熟語について若干語っていきたい。

gestanden は「告白する」の意味である。例えば、シューマンの『詩人の恋』の第1歌の「美しき五月の朝に」の2連では次のようになっている。

Im wunderschönen Monat Mai,
Als alle Vögel sangen,
Da hab’ ich ihr gestanden
Mein Sehnen und Verlangen.
 
ここでは、ある女性への思いを「告白した」とある。昔からの gestanden という語は自分の好きな言葉であった。しかし、この語は stehen の過去分詞と同じ形である。であるので、この語が現れると、どちらかと考えてしまう。「告白」という意味のgestehen  は過去分詞が gestanden と同じになるという厄介な問題を抱えている。
 
ところで、stehen を語源とする語は山ほどあって困ってしまう。verstehen, entstehen, vorstehen, zustehen, anstehen などである。一度まとめて覚え直したほうがいいようだ。
 
ganz egal だが、この egal はフランス系の語だ。ça m’est égal. (どちらでも構わない)という表現がフランス語にある。これと同じだ。この用法がドイツ語に輸入されたと思われる。
 
さて、égalité (平等)はフランス革命の時の標語である。liberté, égalité, fraternité 自由、平等、友愛 はまだ現代でも訴える力の強い語なのである。