2015-02-15

ペストが蔓延しているオランの街だが、季節は6月である。6月のアルジェリアとは暑いのだろうと思われる。読んでいてもその暑さが感じられる。キーワードは、été, soleil, chaleur, juin などである。人々は寒くなると伝染病も弱まるだろうと期待しているが (no. 1821)、このように、盛夏に向かう時期はペストがますます広がっていくことが予想される。

人々は、野犬や野猫を殺すことにする。ノミを媒介するものとして、忌み嫌われているのである。おそらく、犬や猫とペストの広まりとは関係がないと思われる。ネズミはあるだろうが。異常事態では、人々の気持ちは疑心暗鬼になっていることを示している。

Le ciel commence à perdre sa lumière par excès de chaleur. (no.1900)とある。暑すぎるので太陽がその輝きをなくしてしまう、とのことだ。「暑さ」にペストのイメージが重ねられている。「ペストのために、太陽の本来の輝きが見えない」ということだろう。逆に言うて。この話の結末は、おそらく、暑さが小康状態になるとき(冬が近づくにつれて)、ペストも小康状態になり、終了するのだろう。その伏線としてこの文章があるのではと推測する。

この話、できるだけ、読み手である自分もオランの街に入って人々と共感しようとしている。でも、この話の語り手は冷静な口調で語るのみである。人々は大変なパニックだと思うのだが、そのパニック度を詳しく語ってくれれば、読者の共感度はより高まると思うのだが。

つまり、読み手である自分は何が不満かというと、この話はルポルタージュ式に語ってほしい、哲学的・観照的に語るのではなくて、ということだ。