2015-01-29

この手記は作者 Gissing の願望を描いている。晩年においてある程度の豊かさを手に入れてゆったりとした人生を送っている人の生活だ。もっとも晩年と言っても50代であるので今の感覚では中年の後期ということだろうか。

語法的なことだが、 At three-and-fifty a man ought not to be brooding constantly on his vanished youth. (no. 254)という文がある。53歳を示すのに、fifty-three ではなくて、逆に数字を並べるようだ。これはドイツ語の数字の並べ方と同じである。100年前はこんな風にして数字を示していたのか。

Tibullus というローマの詩人が出てくる。そして、その人の詩からの引用がある。主人公は自由にラテン語を読めたようである。そして、Tibullus (ティバラスと読むようだ。そして、英語版のWikipeida で調べると、この詩人は紀元前55年に生まれて紀元前19年に亡くなっている。36年間の短い人生であるが、当時はそれが普通だったのか。幾つか詩集を出している)の詩を好んでいたようだ。主人公は本好きで本屋や古書店を巡った思い出を幾つか書いている。

驚いたことに、five miles an hour (no. 353) で歩いたとある。一時間に8キロぐらい歩いたようだ。かなりの早足か、あるいは長身の人で足が長いのでこんな速度で歩けたのか。さらに1日に15、6時間歩いたこともあるという。若い頃はかなりタフであったと推測する。そして、彼はギボンの『ローマ帝国興亡史』を購入した思い出を書いてある。このあたり、本に対する作者の思い入れが窺えて共鳴する。私も若い頃は神田の古本屋街を歩くのが楽しみだった。また作者は若い頃は本のカタログを見るのはフラストレーションがたまるので見なかったが、今はやや豊かになったので、本のカタログを見るのが楽しみだと言う。

I had breakfasted, (no. 444) という表現がある。breakfast を動詞として使っている。現代ならば I had eaten breakfast. となるだろう。昔の語法をいろいろと知ることができて、それも楽しい。