2015-01-20

グリム童話集の第180話は Die ungleichen Kinder Evas である。この話はクルト・ザックスの詩(1558年)に基づいているとのこと、Wilipediaによればザックスは、「生涯に4,374篇のマイスター歌、約2,000の祝詞歌(Spruch)、120以上の悲喜劇、85本の謝肉祭劇、7篇の散文対話を残した。 作品の主題は、ルター訳聖書の一節、古い教会制度への風刺、時事的な出来事の記録、道徳的な教訓を盛り込んだ寓話など、多岐に及んでいる」とのことである。

さて、この話であるが、確かに面白い。アダムとイヴがパラダイスから追い出された後、子供を産む。美しい子供もいれば、醜い子供もいた。ある時に神が天使を送って自分は家庭訪問することを告げさせる。しかし、イヴは醜い子供は主に見せたくなかった。Die häßlichen Kinder aber sollten sich nicht sehen lassen. (no.9795) 自分の醜い子供たちを藁、梁、ワインの桶、地下室などに隠した。そして、美しい子供たち12名が一列に並んで主を迎えた。主はそれぞれを祝福して、一人は王、次は公爵、次は伯爵などに将来なるようにと告げる。それを見ていたイヴは醜い子供たちも祝福してくれと、彼らを隠していたところから連れ出してお願いをする。主は苦笑して、それらの子供たちに祝福を与え、農夫、漁師、鍛冶屋、皮なめし職人、機織り職人、靴屋などの職業につくようにと告げた。

イヴは主の祝福は不公平 (ungleich) と抗議すると、主は誰が農業をして、魚を捕え、鉄を作るのかと教え諭した。それでイヴも納得するという話である。親でも美しい子供は自慢に思い、醜い子供は恥ずかしく感じて隠すという点が面白い(たしかに真実でもあるが)。

グリム兄弟がこの話を収集した理由は純粋なドイツの民話と思ったからであろう。しかし、後世の研究で、出典はクルト・ザックスの詩であることが分かったのであろう。グリム兄弟は、初めからこのは話の出典がクスト・ザックスの詩であることが分かっていたら、グリム兄弟はこの話を含めなかったであろう。

第181話は Die Nixe im Teich である。あるところに粉屋が住んでいた。当初は豊かな生活をしていたが、次第に貧乏となる。そんな時に、池の精霊と出会い、子供を精霊に捧げることで再び金持ちになることを約束 (Zusage)する。そして、金持ちになり、男の子が生まれる。両親は子供が池の精霊に取られることを恐れて、子供が池に近づくことを禁止する。

男の子は成長して猟師として活躍する。そして、ある女性と結婚する。猟師は鹿を追ってその際についた血を洗おうと池のそばにくるとたちまち池の中に飲み込まれてしまう。女性は猟師が戻ってこないので、心配となり、池のそばに来て何が起こったのか推測して嘆き悲しむ。池のそばで寝ていると、夢の中で老女と出会い、目覚めてからその老女と会いに行き、満月の日に金の櫛を水辺に置くようにアドバイスされる。そして、金の櫛が水辺に沈み、猟師のが姿がしばし見えてまた沈む。再び老女のアドバイスで今度は金のフルートを置く、今度も漁師と出会う。がまた消えてしまう。三度目はうまくいくが、波が激しく襲ってきて、その時、二人はカエルとガマガエルになるという箇所がある。それで助かるが結局は別れてしまうというくだりだ。an, und in dem Augenblick waren sie verwandelt, sie in eine Kröte, er in einen Frosch. Die Flut, die sie erreicht hatte, konnte sie nicht töten, aber sie riß sie beide voneinander und führte sie weit weg. (no.9885) しかし、最後は二人は再会してめでたしめでたしという話である。

この説明だとあまり面白くないかもしれないが、自分は結構気に入った話である。文章もいいので、これもゆっくりと味わって読んでみるのがいいと思う。