2015-04-01

The Sun Also Rises を読み終える。起承転結はないが、飽きない内容だ。不思議な本だ。何か困難に出会って、それを克服して、主人公が成長するという、通常のパターンの本ではない。主人公の数が月が時系列的に語られている。でもそれは魅力的な数カ月である。読んで気づいた点を以下、箇条書きに記していく。

(1)Rot という言葉をよく使う。1920年代に流行った言葉のようだ。

(2)Centre (no. 3978; no. 4119)となっている。このkindle版は、center はイギリス式のスペルで書いてあるようだ。この本はイギリスで発行された時のタイトルは Fiesta である。それならば、イギリス英語で書いてあるのも理解できるが、このkindle 版はErnest Hemingway 7 Novels + 3 Non Fiction というタイトルで、どうやらアメリカ人の読者向けの本らしい(kindle はとても安い、これで200円ぐらいだったと記憶している)。その中に収録されている The Sun Also Rises を読んだのだ。であるので、アメリカ式のスペルになるはずだが。

(3)スペインの闘牛の町、Pamplona で主人公たちの華やいだ気持ちが伝わる。人々も楽しそうだ。町中がお祭り気分だ。Down the street came dancers. (no. 4021) でもこのdancers は全員が男である。

(4)They took Bill and me by the arms and put us in the circle. (no. 4043) Then I asked a man and he took me by the arm and led me to it. (no. 4056)
身体の一部をつかんだという表現は、複数の人間が対象ならば、by the arms となることを発見する。自分はなぜか、複数でも単数でも by the arm になると思っていた。

(5)祭りの場面を読んでいる。読者もウキウキしてくる。お酒も美味しそうだ。著者が酒好きだったことがわかる。私も影響されて、夕食は日本酒を飲んで寝てしまい、数時間後に目がさめる。そして、今、このブログを書いている。

(6)”I’m a little nervy about it,” Brett said. (no. 4167) この文章だが、I am a little nervous about it. と同じ意味だと思う。nervous を使わないでnervy という語を使うのか。辞書によると、アメリカ英語では「あつまかしい」の意味で、イギリス英語では「神経質な、怯えている」という意味だそうだ。この場合は、イギリス英語の意味で使ってあると思うのだが、どうなのか。Hemingway は随所でイギリス英語の影響を受けていたのか。

(7)闘牛士はスターでもある。彼の一挙手一動作が注目されている。

(8)Belmonte は古い時代のスターである。引退したのにまた登場する。しかし、ブーイングを受ける。

(9)このkindle 版はたくさんの誤植が目立つ。たとえば、Belmonte を Be!monte のように記す。スキャナーで読み取って、読み取りの修正が追いついていないようだ。kindle版は安いから我慢できるが、早めに修正を望む。

(10)殺した闘牛の耳を切って観衆に見せるという習慣があるようだ。Romero は Brett にも見せる。彼女への敬意と愛情の表明として。

(11)swell (素晴らしい)という言葉もよく出てくる。これは Chandler にもよく出てきた表現だ。当時の流行り言葉か。

(12)みんな、酒を飲んでばかりいる。日本人読者もヨーロッパのお酒の名前に詳しくなりそうだ。また、こんな風に人生を送るのが最高の贅沢だと考える読者も出てくるだろう。

(13)マドリッドに主人公は行こうとする。列車があるかどうか聞いている。すると the Sud Express (no. 5512) があるという。この部分だが、Audiobook で聴いた時は、意味がよくわからず、pseudo-express と解釈して、「準急列車」みたいなものかと考えていた。やはり文章で読むとよくわかる。

(14)Brett によれば、Romeo は彼女と結婚したがっていたそうだ。19歳の男と34歳の女の結婚か。このあたりの詳しいことは、Brett は語らない。なお、ビデオでは、無一文の Brett に主人公がお金を渡す場面があるが、小説ではそのような場面はないようだ(自分の見落としか?)。
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この小説は、SF やミステリーのように、問題解決や悪者退治の話ではない。主人公の人生のある時期を語った小説である。不思議な魅力をたたえているのは事実だ。自分としては、読んで十分に楽しめたのでよかった。