2014-06-03

『異邦人』を読んでいる。いろいろと気づいた点がある。ムルソーがマリーからの求婚で、愛の有無を訊ねられたときに素っ気ない返事をしている。その後で、老人と老犬の話しが出てくる。老犬がいなくなり、老人は気落ちして寂しがっている。子犬の時から育てたという。et il avait eu celui-là très jeune. Il avait fallu le nourrir au biberon. (p.69) 時々ののしっていたが、「いい犬だった」と言う。Mais c’était un bon chien quand même. (p.69) の文がある。ムルソーのマリーへの素っ気ない態度に対比して、犬がいなくなったことで嘆き悲しむ老人の姿は対比となる。老人はいつもは罵倒していたが実は犬を愛していたことが分かる。このあたり、二つのお話を並べる点で Camus は巧みな語り手だと思う。

マリーも気になる女性である。昔読んだ時は気づかなかったが、彼女はとても魅力的に書かれている。彼女はよく笑う。ムルソーの不気味な返事を聞いた後でも、(p.65 ) elle m’a pris le bras en souriant et elle a déclaré qu’elle voulait se marier avec moi. と言う。その他にも各所で elle a ri との表現がよく出てくる。ムルソーの姿をくっきりと浮かび上がらせるためだが、脇役達もそれぞれが上手に描かれている。

そして、海辺での太陽と暑さが上手に書けている。(今日は6月3日でもう暑い日だが、この小説を味わうためにも、エアコンはいれないでこの小説を読んでいる。)いくつか魅力的な箇所を抜き出してみたい。Le soleil était maintenant écrasant. Il se brisait en morceaux sur le sable et sur la mer. (p.82) マリーとの愛の場面も美しい。Nous avons couru pour nous étaler dans les premiéres petites vagues. Nour avons fait quelques brasses et elle s’est collée contre moi. J’ai senti ses jambes autour des miennes et je l’ai désirée. (p.77)

あと、アラブ人への第1回目の発砲ははっきりとは書いてないことに気づいた。La gâchette a cédé, j’ai touché le ventre poli de la crosse et c’est là, dans le bruit à la fois sec et assourdissant, que tout a commencé. (p.88)とぼかして書いてある。そして、第一部の最後には、Et c’était comme quatre coups brefs que je frappais sur la porte du malheur. (p.88) との不気味な表現がある。ムルソーはいよいよ運命(社会?世間?神?)と対決していくのである。

(今回のページ数の記載はGallimard版から引用した箇所のページである)