2014-04-12

no.653に次のような文がある。Je ne le savais pas moi-meme, dis-je, assez surpris. この dis-je だが、英語では、…, I said. となる。主語が代名詞でなければ、…, said Mr. Smith. のようになる。情報量の少ない代名詞は前に移動するという規則はフランス語では適用されないのか。

ロワイヤルの例文を見ると、C’est une bonne idee, dit-il. [dit Robert]とある。つまり、誰が言ったのか重要であり、固有名詞ならば後ろに来るということであろう。文中でもこの規則が適用されるようだ。Le coeur, a dit Pascal, a ses raisons que la raison ne connait pas. のようにPascalは倒置される。ドイツ語ではと独和大辞典(電子版)を引くと、Ich komme, sagen wir, am Mittwoch. どうも代名詞でも動詞の前に移動しないようだ。

no.691 に次のような文がある。Mais a peine avis-je eu le temps de m’installer dans ma chambre qu’un domestique vint m’avenir qu’elle ma’attendait dans le salon. これは倒置の文である。倒置が行われるのは、情報量の多い部分を後ろに持って行くためだが。a peine .. que の文では、a peineが文頭に置かれると、主語と動詞が倒置をするのが普通である。それはいいが、その理由が分からない。語調がよくなるとか、文がきれいになるのが理由と言ったら、何も説明したことにならない。

『フランス語ハンドブック』(白水社)p.208には、次のような例文が挙げてある。Soudain apparait une plaine triste sans arbres. 説明は、「本義の動詞を示すよりも、主語を引き出す役割」とある。なるほど、でも、a peineの倒置だと、何を強調したいのか?ただ、倒置であるということだけを読者に伝えて、異常性、緊迫感を伝えることが目的なのか?