2014-04-09

no.87 に次のような文がある。j’entre au salon chercher un livre; elle y etait.の文だが、後ろの文は、elle etait au salonとなるべきだが、au salonを受けて 中性名詞の y となり、情報構造の視点から、etaitの前に来る。これはいいのだが、entrerとchercherの関係が分からない。並列かchercherするためにという目的を示す不定詞なのか。

『フランス語ハンドブック』(白水社)p.118-9には、動詞が直接に不定詞を従える場合と前置詞(de, a)を介して不定詞を従える場合があると書いてある。前置詞なしの不定詞を従えるのは、主として意見・意志を示す動詞であり、compter, croire, desire, esperer, preferer, pretendre が例として示されている。またde+不定詞となるのは、accepter, attendre, cesser, decider, essayer, oublier, refuser, regretter, promettreとある。a+不定詞となるのは若干の動詞であり、apprendre, chercherとある。entrerの次にchercherが不定詞として続いているのか、よく分からない。

no. 94に、Le coeur battant, je m’approche d’elle; je prends sur moi de lui sourire et de lui tendre la main. ここだが、Je lui ai pris la main. では、「彼女の手を取った」の意味になる。さらに、sur moiがあるが、どのような位置関係になるのか。彼女の手を取って私の手の上に乗せたのか?sourireしたのは、わたしなのか、頭を抱えてしまう。次の文だが、Elle garde ma main dans l’une des siennes et de l’autre caresse ma joue. 彼女は一つの手で私の手を握ったままにしていて、他の手で(de l’autre)私のほほを愛撫したとある。この場合、l’autre de sienne のことだが、sienne が省略されて、かつdeが前に来たのか?と迷ってしまう。

同じページに、elle attire contre le sien mon visage, passe autour de mon cou son bras nu とある。動詞の次に前置詞句が来て、次に目的語がくるというこの配列は自然なのか?やはり、elle attire mon visage contre le sien, passe son bras nu autour de mon cou となるべきではないか。目的語が後ろに来たのは、情報構造上の要請(つまり、意味上の要請)なのか。

ところで、話題は変わるが、ネット上でフランス語の語順に関する論情報をさがしたら結構見つかった。ヨハン先生の「フランス語文章構造の基本を理解しよう(18)」に、le, en, y が前の内容をうけてどのように使われるか例文と共に示して分かりやすい。

Il boit de la bière. J’en bois aussi. 「彼はビールを飲む。私もそれだ」

Il a trois enfants. J’en ai deux. 「彼は子供が3人いる。うちは二人だ」

Je pense souvent à mon avenir. 「将来のことをよく考えます」

→ J’y pense souvent.

Elle travaille au magasin. 「彼女はそのお店で働いている」

→ Elle y travaille.

そして、それらは情報の内容が軽くなるので動詞の前に移動する。このあたりの情報構造は英語とフランス語は同じだなと感じる。

no.120 に Sans doute, elle ressemblait beaucoup a sa mere; mais son regard etait d’expression si differente que je ne m’avisai de cette ressemblance que plus tard. とある。Alissa Bucolin と母がよく似ているが、しかし内面は異なることを示している。放蕩な母から、正反対のAlissaが生まれたことは逆説的で興味深い。

あと、登場人物達がプロテスタントということを今まで気づかなかった。pasteur Vautierと昵懇にしていたが、pasteurは牧師であり、よって妻がいたので、Lucile Bucolinを養女にできたのである。この本が雰囲気的に重いのはプロテスタントであるからか。

no.140 に La chambre d’Alissa est au troisieme etage.とある。えー!アリサの部屋は4階にあるのか!?そんな大きな家なのか?主人公がのぼって行く順番が書いてある。Au premier, le salon et la salle a manger. つまり、2階に食堂がある。au second, la chambre de ma tante であり、3階に叔母さんの部屋がある。主人公はアリサの部屋にのぼっていくのに、どうして1階 rez-de-chausseeのことは記していないのか。もしかしたら、troisieme etageは3階として考えられているのではないか?

no.153 そこで、とにかく、主人公はアリサの部屋の前にたどり着く。下の部屋では叔母さんが見知らぬ若い将校と仲良くなっている。Les rires et les eclats de voix montent de l’etage inferieur とある。下界は汚らわしいことをしているが、上界は清らかな世界という意味での対比である。この部分は逆は絶対にあり得ない。アリサの部屋が下の階で、上の階に叔母さんの部屋ということならば、… de viox decendant de l’etage superieur となって印象が薄れてしまう。このあたり、作者は工夫しているなと感心する。