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『10倍速く書ける 超スピード文章術』(上阪徹、ダイヤモンド社)を読んだ。非常に有益な本だと思う。我々が漠然と分かっていたことだが、それをはっきりと述べてくれていた。
なお、この本の作者が主張しているのでは、文学的な文章ではなくて、実用的な文章である。実用的な文章では、「求められているのは有益な情報(p.40)」である。旅行案内書では、著者の感想もたしかに有益ではあるが、第1の目的はそんな感想を読むことではない。
読者が知りたいのは、観光地へどうやって行ったらいいのか、有名な美術館や講演はあるのか、混みぐらいはどうか、駐車場はどうか、手頃な値段のホテルがあるかどうかを知りたいのだ。
これが、「よかった」「美しかった」では情報としての価値が零である。さらには、他の類書の観光案内と差別化ができない。差別化するためにも、是非とも読者が求めている情報は何かを知って、それを答えるようにしなければならない。
さらには、有益な情報はそれはそれでいいのだが、その書き手だけが知っている情報、つまり、「独自の事実とエピソードと数字を集める。どう書くかではなくて何を書くかに集中する。(p.62)」必要がある。自分で実際に行って、その地を経験して、その地のエピソードをたくさん仕入れることが大切である。
その場合は、美文である必要はない。感想文集ならば、それはそれでいい。だが、この本が述べているのは感想論文集のことではなくて、実用的な文のことである。
その具体的な在り方として、常にメモを取れと著者は薦める。自分もそのことは気にかけていて、メモ用紙に書いているが、著者はスマホを使っているようだ。何に書くのもいいのだ。ただ、頭の中に覚えておこうとか、あとで家に戻ってから書き留めようとしていては駄目である。その場で書き留める必要がある。「自分の記憶力は絶対に信用してはいけない、単純にひらめきをメモする(p.105)」
著者は、その場合は、メールの下書きにためておくそうだ。そして自分自身に送信したりするという。「素材のストックは「メーラーの下書き」を使う。(p.132)」とのことである。
「だから、また、さらに、などの順接の接続詞を使わない(p.159)」という点も印象に残った部分であった。自分はよく順接の接続詞を用いるが、これは冗長な感じがするそうだ。なるほど、言われてみればそうかもしれない。自分も気をつけよう。