YouTube を見ていたら、『方丈記』Tokiomate (https://www.youtube.com/watch?v=Yt6pW0lXJ34) と言う動画を見つけた。面白いので視聴した。もともとはNHKの「今よみがえる方丈記~日本最古の災害ルポルタージュを読む」の初めをはしょってまとめた動画のようだ。

方丈記を災害ルポルタージュと解釈するのは、なるほどと思った。方丈記には、安元の大火、戦乱の街、福原への遷都、大飢饉と強風と、京都の町が被った様子が述べられている。このような災害の連続は鴨長明の厭世観を次第に強めてゆく。現代は福島の大震災があったりでこの当時と状況が似ていると番組は述べている。

この番組では、方丈記にくわしい専門家を4,5名参加させて、いろいろな話しをさせている。互いにつながり合って、このあたり、NHKの番組を作り上げる企画力は見事だなと感じた。

鳥越俊太郎がジャーナリストの原点を鴨長明に見いだしている。鴨長明は意外と歩いて各地を訪れることが好きであった。鎌倉幕府が成立すれば、わざわざ鎌倉まで見に行っている。さらには、熊野や吉野も訪れている。(私見では、京都から鎌倉へ行くのは、現代の感覚では、地球から月へ行くくらいの感覚ではと思う。)それくらい、ジャーナリスト的な行動を取る人であった。

鳥越俊太郎は、旅行や取材の時には、カバンに方丈記をしのばせて行動するという。彼は自分の行動の原点を鴨長明に見いだしている点は面白い。

芥川賞作家の新井満も鴨長明の大フアンだ。彼は札幌の郊外に方丈を建ててそこで本を書いたり作詞作曲をしたりしている。彼は、鴨長明が和歌や琵琶を親しんだことから、当時のアーティスト、ミュージシャンであったと評価している。(そんな見方もあるかと自分は感心する)彼には『自由訳方丈記』という本がある。

その他にも成蹊大学の浅見和彦教授、人形師辻村寿三郎、朗読担当の俳優の西岡徳馬などがこの番組の構成員である。それぞれの視点から鴨長明を語っている。

さて、自分は京都に住んだことがある。下鴨神社にある復元された方丈記の庵を見たことがある。そんな日のことをこの番組を見て思い出した。彼は下鴨神社の神主の息子で、もしかしたら神主の地位を得られたかもしれないが、結局は勢力争いに敗れて、50歳で出家するのだ。

彼が晩年住んだ伏見だが、現代は工場が立ち並ぶ騒がしい地域だ。その中でも彼が庵を住んだというあたりは自然が残る地域である。しかし、庵跡だが、山の斜面にあったようで、どうして生活をしたのか不思議に思う。これでは、人里からかなり離れた地域で、生活物資にも不自由して、生活には難しい地域ではないかと思う。

そんな彼も方丈記を執筆の4年後、62歳でこの世を去る。その当時で言えば、長寿の方になるのだろう。