Zarathustra の Vorrede を読み終わる。綱渡名人の死骸を葬って、かれは生者だけを求めることを決意する。

この綱渡名人(Seiltänzer)が何を象徴しているのか。キリスト教かイエス・キリストか。キリストと仮定して、キリストは民衆のために十字架に架けられた。ニーチェに言わせれば、それで死んでしまった。一件落着だ。復活はなかった。死んでしまったイエスを何時までも後生大事に取り扱っているのはおかしいという意見だろう。

(no.695) Dunkel ist die Nacht, dunkel sind die Wege Zarathustras. という文は印象的だ。Zarathustra の行く道は暗い、という文章に注目する。ここでは、der Weg と単数形にならないで、die Wege と複数形になっている。かれの行く様々な道は暗かったと複数形にしたほうが迫力はでる。

(no.805) Endlich aber tat sein Auge sich auf: verwundert sah Zarathustra in den Wald und die Stille, verwundert sah ere in sich hinein.  彼はよく眠りそして森の中で目覚める。何かに気づく。(no.805) denn er sah eine neue Wahrheit.

(no.837) Den, der zerbricht ihre Tafeln der Werte, den Brecher, den Verbrecher – das aber ist der Schaffende. これは既存の価値を破壊する者が創造者であると述べている。

ーこんな文章を読んだ当時の若者は、Tafeln der Werte にいろいろな物を当てはめて壊そうとしたのであろう。ニイーチェはキリスト教の倫理意識を意図したのであろう。

(no. 848) Die Mitschaffenden sucht der Schaffende, die, welche neue Werte auf neue Tafeln schreiben. 新しい価値を創り出そうとしている。でも、観念の世界の中だけでの価値一新ではないか。現実世界の改革にはつながらないのではないか。

しかし、そのように考えるべきではないのだろう。まず、観念の世界での改革があって、次に現実の世界での改革が始まるのだから。

そして空を眺めている姿が描かれる。鷲を最も気高い動物として、蛇を最も賢い動物と呼んでいる。そこで、Vorrede は終わっている。

次は第1章だ。有名な30歳になったら故郷を捨てて山に引きこもった話だ。(no. 942) Als Zarathustra dreißig Jahre alt war, verließ er seine Heimat und den See und ging in das Gebirge.

(ゆっくりと勝手な想像を加えながら読んでいくと楽しい。下に岩波訳本を示す)

竹田の『ニーチェ入門』は分かりやすい。自分が今まで読んだ中で一番感銘した。自分のような哲学の素人向きだ。