2015-05-01

Hänsel und Gretel を再度読んでみた。これは最終版(1857年)であるので、ついでに初版(1812年)も読んでみて、いくつか比較をしてみた。

(1)初版ではいくつかの単語が古調である。たとえば、ヘンゼルが妹を慰める場面では初版では、sey still, Gretel, und gräm dich nicht, ich will uns helfen (no,631) と言っている。最終版では、Still, Grethel,“ sprach Hänsel, „gräme dich nicht, ich will uns schon helfen.となっている。

(2)初版では、子供達に面する時は、die Mutter が使われている。kam die Mutter und weckte sie alle beide: “steht auf, ihr Kinder, (no.638) である。最終版では kam schon die Frau und weckte die beiden Kinder, „steht auf, ihr Faullenzer とある。つまり die Mutter と使うことで、実の母であることを示している。しかし、最終版では、die Frau となっていて、継母であることを暗示している。各版を調べたら、1840年版から、die Frau という使い方になっていて、それまでの初版、1819年版、1837年版では、die Mutter であった。

(3)初版版で、子供達に対して、ihr Kinder と呼びかけるが、最終版では、ihr Faullenzer (お前たち、なまけもの)と呼びかける。この言葉は、魔女がグレーテルに使う言葉と同じである。steh auf, du Faullenzerin, hol Wasser und geh in die Küche und koch gut zu essen (初版)、„steh auf, Faullenzerin, trag Wasser und koch deinem Bruder etwas gutes, (最終版)のように使われている。つまり、魔女と母親は同じ人物であることを暗示している。

(4)子供たちが何とか家に戻ってくると、初版では、die Mutter stellte sich auch, als wenn sie sich freute, heimlich aber war sie bös.と母親は表面的には喜ぶそぶりを見せる。しかし、最終版では、als die Frau aufmachte und sah daß es Hänsel und Grethel war, sprach sie „ihr bösen Kinder, was habt ihr so lange im Walde geschlafen, wir haben geglaubt ihr wolltet gar nicht wieder kommen.“ とあって、継母の悪役ぶりがより目立つように書かれている。

(5)二人が二回目に森に迷うと、初版では自力でお菓子の家を見つけているが、最終版では sahen sie ein schönes schneeweißes Vöglein auf einem Ast sitzen とあって、白い鳥が導いてくれる。

(6)魔女を退治した後、初版では、二人は簡単に家に戻る。拍子抜けするくらいに簡単である。あれだけ森の中で迷ったのが何だったのかと考えてしまう。gingen ofrt und fanden den Weg nach Haus とあるだけでだ。しかし、最終版では、おおきな川があり、橋も船もないので、Entchen (あひる)に運んでもらう。

(7)まとめると、最終版では、母親が実母から継母へと変更されて、さらには魔女でもあったとも暗示されるようになっている。初版ではお菓子を家を簡単に見つけ、さらには自宅へ簡単に帰るので、不自然だが、最終版では、白い鳥とあひるの手助けで道を見つけるとなって、物語らしくなっている。
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自分としては、初版の方が童話らしくていいと思う。物語としての体裁を整えるために、いろいろと加筆されて、劇的な場面が目立つように工夫されてきたが、童話では、むしろ素朴で未熟なストーリーであることが、大きな魅力になるのではないか。