2015-03-08

『アンデルセン童話集』の2番目の話を読む。Das Bronzeschweinである。「豚の青銅像」とでも訳すのか。イタリアのフローレンスが舞台である。作者のイタリアの風土や文芸へのあこがれが示されているお話である(デンマークのような北の国の人々はイタリアの様な温かい国そして歴史のある国には憧れを抱くのであろう)。この物語の主人公は貧しい少年である。少年は豚の青銅像の上に乗り、寝てします。その中でいろいろな夢を見る。豚の像は走りだし、たくさんの像が立っている回廊にゆき、少年は美しい像たちと出会う。

少年のことをKnabe と訳してあるが、これは雅語であり、最近はJungeがよく使われるようだ。Der Knabe war wie geblendet von all dem Glanze. Die Wände strahlten von Farben wieder, und alles war Leben und Bewegung.(no.368) 少年は回廊ですばらしい彫刻、銅像などの光り輝く様子に目がくらんでしまう。

また、自分は西洋社会における黒髪や黒い目の価値に関心があるので、以下のような文にも注目してしまう。この少年の目は黒いようだ。während die dunklen Augen von den glühenden Gefühlen des Blutes sprachen;(no.374)「情熱的な血から語りかけるような黒い目」と試訳してみる。あるいは、目が充血しているのか。

ダンテ、ミケランジェロ等も現れる。その他にも自分の知らないイタリアの芸術家が出てくる。少年はこの大芸術家たちからインスピレーションを吹き込まれ、そして、画家としての才能を開花させる。しかし、若くしてこの世を去るようでもある。

これは童話的な要素はあまりない物語である。ただ、ほのぼのとした物語であることは間違いない。この雰囲気を好む人もいるだろう。アンデルセン節と名付けたい。