2014-06-24

次のような文章がある。 et, derrière les magistrates en robe rouge,(no.2924) 「赤い法衣を着た裁判官たちの後ろに」である。『異邦人』(no.1063)の裁判の場面では、裁判長だけが赤い法衣を着て、両脇の裁判官は黒い法衣を着ていた(そのことを自分は6月5日のブログに書き込んだ)。疑問としては、赤い法衣を着る人は裁判長だけか、それとも裁判官全員か、それは時代によって異なるのか、あるいは植民地と本国では異なるのか。などとかなり細かいことが気になる。いつか法衣の色について調べたい。

Président (no. 2962)「裁判長」という言葉が出てくる。英語の president には「裁判長」という意味があるか、と辞書を詳しく調べたが、どうもないようだ。やはり chief judge, the presiding judge しかない。ドイツ語では Gerichtspräsident で、フランス語と近い言い方をしている。裁判長への呼びかけに monsieur le president (no.2924) とか mon president (no. 2987)と言っている。英語ならば Your Honour が呼びかけの言葉だが。

なお、裁判官は仏英独語で、magistrate, judge, Richter という言い方であることを辞書で確認した。

この物語はいま佳境に入ってきている。犯人の名前を知っているが、まだ言えないと若き記者は述べている。読者を焦らしながら話を持ってきている 作者のGaston Leroux の巧みな語り口には敬意を表したい。Lenoux の特徴として、(1)謎めいた言葉を散りばめる、(2)読者の関心をそらすために副次的な話を入れて、全体のあらすじを分かりにくくしている、(3)登場人物の数を多くしないで各人の個性が出るようにしている、(4)判断材料はすべて隠さずに提供されているとして、読者にも犯人を推論させるようにしている。これが探偵小説の王道だ。