2014-04-06

Hauffの童話集で、「偽王子」の物語を読んでいる。no.1461で王に息子ですよと名乗りをあげる場面で Hier bin ich, den Ihr suchet との文がある。代名詞がbe動詞のあとにくるのは英語では避けられている。つまり、情報構造の上から、*Here am I. なる文は避けられていて、通常は Here I am. となる。うーん、ドイツ語では、情報構造はどうなっているのか、このあたり解説した本か論文はないのか?できれば日本語で書かれた本があればいいのだが。

英語では理由を示す接続詞 because は新情報を扱うので、うしろに置かれる事が多い。Since や As も理由を示す接続詞であるが、話し手と聞き手が既に知っている理由を示す事が多いので、文頭に置かれるのである。asがうしろに置かれたら、時間をしめす接続詞と解釈されることが多い。

この使い分けが、ドイツ語の weil と daにも適用されるようだ。やはり weil の導く節は前よりも後ろに置かれるといろいろな所で書かれている。小学館独和大辞典(電子版)には、次のような文がある。「話し言葉では、weil に導かれる副文が主文のあとに置かれる場合にかぎって、定動詞を文末に置かずに、主文と同じように2番目の位置に置く事がある。Er kann nicht kommen, weil er hat keine Zeit (←weil er keine Zeit hat).」なるほど。

この解釈だが、話し言葉では、定動詞の位置が伝統的な文末から移動しつつあるということか、これは情報構造と関係するのか?そもそも、書き言葉ではいくらでも振り返りができるという性質から、情報構造は弱まっているはずである。情報構造が端的に現れるのは、話し言葉で、対話する二人の文に一番はっきりと現れているはずである。私の力では、ドイツ人の会話を transcribe することはできない。すると、映画か劇のシナリオの対話文を眺めて、そこの情報構造を発見する方法しかないであろう。

情報構造、定動詞、話し言葉と書き言葉、これらが面白そうなキーワードになりそうである。