まず、Gut Kegel und Kartenspiel を読んだ。この話は初版ではかなり短い話になっている。最終版では、賢い二人の兄と愚かな弟が登場して王の城で試練を受けるまでにかなりのストーリが詰め込まれているが、初版では、冒頭から王が「古い城の中で3夜過ごしたら娘と結婚させる」と布告している。wer drei Nächte in meinem alten Schloß wächt, soll die Prinzessin zur Gemahlin haben. (no.292) 話のエキスだけを示している感じだ。

試練の夜のあと眠っている若者を見て、若者が死んだと思った王様は次のように言う。der wäre auch todt, und sagte, es sey schade um ihn. (no.311) これに対して、最終版では、es ist doch schade um den schönen Menschen. (no.390) とあって好青年をなくしたという残念な気持ちが表れている。(最終版でははじめから若者は「バカ」であると紹介されているので、このあたりが読んでいてうまくかみ合わない。愚かしい鼻垂れの小僧のイメージだが)

初版の話はあまりに呆気ないので拍子抜けしたくらいである。これは物語としては、最終版の方がよい。その方がハラハラして読めて楽しめる。

次の7匹の子ヤギと狼の話は基本的には同じ構造である。気づいた点では、初版では子ヤギを示すのに、Geislein, Geiserchen とあって二つの縮小辞が並行して使用されている。lein の方が古風な表現とされているので、この場合、もしも、最終版でGeislein がすべてGeiserchen に置き換わっていたら、この数十年の間に縮小辞の使用の頻度に変化が起こったことの傍証になるかと思って、最終版を見てみる。両方とも相変わらず使われているので、この点はあまり変化はなかった。

「お前はお母さんではない」初版では unsere Mutter bist du nicht, die hat eine feine liebliche Stimme, (no.326) 最終版では du bist unsere Mutter nicht, die hat eine feine und liebliche Stimme (no.446) となっている。

du bist… 以下の語順だが、初版では方言、俗調である。また、形容詞 feine, liebliche の並べ方だが、初版では累積型、最終版ではund でつないで平行型となっている。累積型では形容詞が異なる性質の時であり、平行型は形容詞が同質の場合である。であるから、初版の頃は、この二つの形容詞が質的に異なる形容詞群に分類されると感じられていたが、最終版では、同じ形容詞群に属すると感じられるように変化したと考えておく。

以上、こんなことが自分が考えたことだ。