異文化の森へ

Anabasis

2015-03-01

Ryecroft はAnabasis を極めて高く評価している。「これを読むだけでギリシア語を学ぶ値がある」(no. 836)というようなことを言っている。The Anabasis is an admirable work of art, unique in its combination of concise and rapid narrative with colour and picturesqueness. (no. 836) 大変な褒めようである。What a world of wonders in this little book, all aglow with ambitions and conflicts, with marvels of strange lands; full of perils and rescues, fresh with the air of mountain and of sea! (no. 837) とも言っている。

Anabasis 『アナバシス』は古代ギリシアの軍人・著述家であるクセノポンの著作である。クセノポンがペルシア王の子キュロスが雇ったギリシア人の傭兵に参加したが、雇い主の死でギリシアに戻ることになり、敵の領地の中を苦労してなんとかギリシアに戻った時の経験を語った書物である。これは大変面白い本とのことである。アマゾンで調べるとアナバシス―敵中横断6000キロ (岩波文庫)という邦題で訳が出ている。レビューを見ると、高い評価が多いようだ。

自分自身のkindleの購入リストを調べると、すでに英訳版を購入している(無料で)。また、アマゾンをよく見てみると、これのギリシア語と英語の対訳の本がkindle版 であるのを見つける。Xenophon: Anabasis in Greek + English (SPQR Study Guides Book 41) (English Edition) [Kindle版]である。値段は291円と安いので、早速注文する。ダウンロードしてから、しばらく眺めていたが、冒頭の部分だけでも紹介してみたい。

ギリシア語原文1:1
Δαρείου καὶ Παρυσάτιδος γίγνονται παῖδες δύο, πρεσβύτερος μὲν Ἀρταξέρξης, νεώτερος δὲ Κῦρος: ἐπεὶ δὲ ἠσθένει Δαρεῖος καὶ ὑπώπτευε τελευτὴν τοῦ βίου, ἐβούλετο τὼ παῖδε ἀμφοτέρω παρεῖναι.

該当する英訳部分1:1
Darius and Parysatis had two sons born to them, of whom the elder was Artaxerxes and the younger Cyrus. Now when Darius lay sick and suspected that the end of his life was near, he wished to have both his sons with him.

ギリシア語を自由に読める人は羨ましいと思う。古代のギリシア語は様々な方言があり、それらをすべて理解できる人は稀なようである。多くの方言と千年以上に渡って変化してきた多様なギリシア語がある。さて、Xenophon の使ったギリシア語はどの方言か。プラトンやソクラテスなどの用いたギリシア語方言であったのだろう。私がギリシア語を勉強することは不可能であるが、簡単な文ぐらいは理解できるようになりたいと思うこともある。そんなことで、参考までにギリシア語の原文を掲げてみたのである。

さて、手記の方に戻ると、主人公はあるビジネスマンの勉強の手伝いのために、家庭教師をやっていたようだ。朝教えるのだが、時計を持っていなかったので不便だったとの話がある (no.898)。当時は時計は大変高価でを持っている人は少なかったことがわかる。

主人公の人間嫌いには苦笑する。たしかに正直な人だと思う。All men my brothers? Nay, thank Heaven, that they are not! (no. 940) 私も同意見であるが、あまりはっきりと公言するのはためらってしまう。

モバイルバージョンを終了