異文化の森へ

127~129

2015-01-02

第127話は Der Eisenofen である。ここでは、森に迷った王女が鉄のストーブを発見してその中に閉じ込められた王子を救う物語である。どの物語もそうだが、王子が王子を救う話や 王女を王女が救う物語はない。すべて若い異性を助ける物語である。これは当たり前である。人は読むときに自分を主人公に投影するから、同性を助ける・助けられるではピンとこないのである。

いろいろな話が重なっているように思う。自分が身代わりに水車小屋の娘や豚飼いの娘にストーブに穴を開けるようにしたがうまくいかず自分が穴をあけることになる。そして中にいたのは王子である。しかし、三語以上は話さないという約束を守らなかったので、王女は王子と会えない。それから、王子探しの旅に出る。女性が王子探しの旅にでるというテーマは非常に珍しい。

最後にようやく王子のお城に到着するが、すでに王子は他の女性と結婚している。それで、策略を巡らして、王子の寝室に入り、王子に昔のことを思い出させる。すると、王子は昔を思い出して言う。so sprang der Königssohn auf und sprach »du bist die rechte, du bist mein, und ich bin dein.(no.7801) そして、現在の妻を捨てて、その王女と一緒になり、めでたしめでたしという話である。

現在の妻は、単に falschen Braut (no. 7802) となるだけで、簡単に片付けられる。これは前に方にも似た様な話があった。やはり王子が昔を思い出し、それで現在の妻を捨てるという話である。この話はドロテーア・フィーマンという女性が取材源となっている。彼女は15篇ほどグリム童話集に話を提供しているが、この「昔を思い出し現在の妻を捨てる」というパターンはドロテーア・フィーマン提供の他の話ではないか。

最後にある2行の締めくくりの語句は何の意味があるのか。この解釈がわからない。注釈本が必要だ。
Da kam eine Maus
Das Märchen aus. (no. 7807)

第128話は Die faule Spinnerin である。妻が計略を行って紡ぐ仕事から逃れる。

第129話はDie vier kunstreichen Brüder である。この話は面白いが、これはグリム童話集の中でももう少し評判になってもいいのではと思う。 父親が4名の息子に世間に出て職を習ってこいと追い出すのはよくあるパターンでドイツ的なのか。それぞれが、盗賊、占い師 Sterngucker (no. 7852)、猟師、仕立屋となる。4名が共同でドラゴンを退治して誘拐された王女を救うという物語で、比較的安心して読める。第127話などでは、現在の奥さんを追い出すのだが、そんなに簡単に追い出せるものか、あるいは奥さんの心情はどうか、などと考えて素直に物語に没頭できない。

あと、ドラゴンが追いかけてきて倒す場面だが、先日見た映画 Hobbit の一場面を思い出した。トルキーンはグリム童話集のこの場面からヒントを得てドラゴンが襲いかかる場面を描いたのだろか。

fünfe sinds (no. 7870) の意味がわからない。これは地の文ではなくて、会話文の一部である。グリム童話集では、地の文は分かりやすいドイツ語で書かれていても、会話文は韻文的になり、韻が踏んであったり、古風な文体で書かれることが多い。Es sind fünf. の意味だろうか。

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