異文化の森へ

情報構造

2014-05-05

連休で一昨日、昨日と石川県へと車で行ってきた。昨日戻ったが結構疲れた。ドライブの最中に情報構造と韻のことについていろいろと考えた。

(1)情報構造は、英語とフランス語とドイツ語に共通する構造であると思う。共に、新情報は右側へ、旧情報は左側へと動いていく。それぞれの基本構造で語順は決まっているだが、その語順の制約を超えて、旧情報は左側へ、新情報は右側へ進んでいく。英独仏の3言語の差異があるとしたら、語順の制約をどの程度乗り越えることができるかの違いだと思う。

代名詞に着目すると、Je donne des fruits aux enfants.「子ども達に果物を与える」という文だが、「子ども達」と「果物」を代名詞にすると、動詞の前に進んで

Je leur en donne.となる。英語では、代名詞となっても動詞を乗り越えてまで左側には来ない。ところで、ドイツ語だと、5月2日のブログに述べたが、das mir der Lehrer gegeben hat (先生が私にくれた辞書)のように、副文では主格の左まで移動してしまう。これらの事例を参考にして、何とか、英独仏語の新情報と旧情報の右・左の移動についての違いを一覧表にしてみたいと考えている。

そもそも、言語の一番の根本は動詞であろう。赤ん坊については、「欲しい」「怖い」などの動詞だけが存在して、「誰が」ということは関係ない。誰がというのはもちろん自分だけであり、他者の存在は次の段階で意識される。自分の保護者として「お母さん」の存在を意識して、その対峙として「自分」が意識される。そこから主語が使われ、動詞が次にくる。赤ちゃんの意識がより分析的になると、「欲しい」ものや「怖いもの」の対象を述べることができるようになる。

そこから、SVOの構造ができあがっていったのだろう。しかし、世の中には、SOV構造の言語はたくあんある。すると、赤ちゃんはまず「対象」を意識して、そこからその対象への「働きかけ」として動詞の存在を意識するようになった。というような学説が可能になる。事実は、おそらく、動詞と目的語は同時に意識されるようになったが、言語により(その言語の使われる社会的な約束事で)動詞部分がより新情報・重要であると考えられるので左に置かれる場合と、目的語部分がより新情報・重要であると考えられるので左に置かれる場合があるという風に考えた方がいいだろう。

言語と社会生活との関係は重要であろう。閉ざされた社会では、主語を明示する必要はない。敬語の使い方や男言葉か女言葉か幼児の言葉かを見ることで、容易に主語が推測されてしまうのであろう。社会が流動化して、接する人間の数が増えてくると主語を明記する必要が出てくる。グローバル化時代は主語を明示しろということになろう。

動詞部分が新情報・重要と見なされる社会と目的語部分が新情報・重要と見なされる社会が2つあるゆえに、SVOとSOVの2つの構造が存在すると言ってはどうか。「リンゴ」を食べた、リンゴを「食べた」のどちらが重要かということになろう。まだまだ考えていかなければならない。

書き言葉と話し言葉も重要な視点である。そもそも、話し言葉の世界ではなんと言っても語順は大切である。対話とは、聞き手と話し手が文末のクライマックスへと準備をしていくことである。話し言葉は一回発生されたら、それで消えてしまう。よって情報構造がクリアに示されるのである。しかし、書き言葉の世界では重要な部分を語末に置くという必要性が減少する。重要な部分は下線部を引いたり、大文字にすることでその役目を果たすことができる。

書き言葉の世界では、将来は情報はフローチャートや図表で情報が示されるようになるであろう。書き言葉のこの現象は、当然、現代の話し言葉にも影響を与えているだろう。各言語の情報構造の違いは、書き言葉の影響がどの程度話し言葉に影響を与えているのか、その進み具合、「文明化」の程度の違いという風に還元できるかもしれない。

話しは飛ぶが、韻を踏むという技法について考えてみる。韻を踏むことは、話し言葉の世界の約束事である。声を出して歌われる前提で作られる詩に通用する話しである。脚韻では、各行の最後尾がAABBと韻が踏んであるもの、ABABと踏んであるものといくつかの種類がある。(AABBと並んでいるのならば、記憶もあり形式美を感じるが、ABABの形だと記憶がそれまで覚えていられるのか、自分はちょっと疑問を感じる。)ところで、問題は韻を踏むことが情報理論でどのように説明されるのかということだ。

語呂がいいから、ある語が最後尾に来るという説明は、情報構造を必要としない説明である。韻の技法まで情報構造の理論で説明できれば、この理論がきわめて強力であることを実証することになるのだが、さて、道はかなり遠そうである。

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