異文化の森へ

DVD『椿三十郎』を見る。


私は『椿三十郎』という映画を知らなかった。始めてこの言葉を知ったのは、政治家、小沢一郎の言葉からであった。

むかし、テレビ朝日の取締役報道局長であった椿貞良が、日本民間放送連盟(民放連)会合での発言で「反自民の連立政権を成立させるための報道をしよう」と語ったことが大騒ぎになり、椿貞良は国会に呼ばれて説明まで求められた。

その頃、小沢一郎は、ある記者から「椿貞良氏と昵懇か、椿氏を知っているか」という質問を受けた。小沢は、「椿貞良氏は全然知らない。でも、自分は椿三十郎なら知っている」と答えたのである。

その回答で、私は椿三十郎の存在を始めて知ったのだ。それ以来、何となく気になっていた人の名前であった。2日前、DVDを借りにレンタルビデオショップに行ったら、このDVDを見つけた。早速借り出して視聴した次第である。

三船敏郎が演じる無頼の浪人である椿三十郎が主人公である。日本人が憧れるスーパースターの一つの典型である。どこにも所属せずに、風来坊である。腕は確かで、知恵も回る。また、鋭い勘を持っていて、敵方の策略を見破ることもしばしばである。

勧善懲悪の世界である。善人はあくまでも善人で、悪人はあくまでも悪人である。しかし、実際の社会での事件は、人間は単純に割り切れるものではなくて、善人の要素も悪人の要素も、両方持っているのが普通である。この両側面の葛藤を描くのが現代のドラマや映画の特徴である。

しかし、時代劇によく見られる勧善懲悪劇は安心して見ることができる。最終的には善人が勝つという約束事にそって、ストーリーは展開する。

三船敏郎と仲代達矢の宿命の対決も面白い。最後の決闘で、切られた仲代達矢の体から、たくさんの血が噴き出すのだが、この場面は印象的である。

そして、最後は三船敏郎演じる椿三十郎は、高給を約束された宮仕えの仕事には関心を示さずに、貧乏な放浪の旅を続けるのである。日本人が憧れる生き方の一つでもある。「格好いい」と感じるのであろう。

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