異文化の森へ

The moving target を読み終える。


Ross Macdonald のThe Moving Target (Vintage Crime)を読み終えた。このタイトルだが、文中にこの語が出てくるのは3回である。

(p.111)  I’m going to meet something – something utterly new.  Something naked and bright, a moving target in the road.

(p.117) Sure I get bored.  I need something naked and bright. A moving target in the road.

(p.121) Yeah. He’s a moving target I’d like to hit some time.

誘拐された金持ちの娘の Miranda の発した言葉の様である。それを主人公が受けて言い返したりしている。何か刺激を求めているMiranda の心が見える言葉である。

ところで、彼女が恋をしている男性 Alan Taggert を暗示しているのだか。つまりTarggert とTargetが重なる様に思えるのだ。作者はそこまで考えてこの小説を組み立てたのか。

この本は作者の Lew Archer シリーズの最初である。正直言って、洗練さがやや欠けていると思う。各自の過去、心理的な負荷に対する掘り下げが足りない。それらは、作者の後期の作品において光ってくるのだが。まあ、シリーズの始めとして、あまりに酷なのはいけないだろう。

アマゾンのレビューに次の様なコメントを見つけた。なるほどと思う。
This is not the best book in the series, but it is the place to start reading the Archer books and a good read.

ところで、彼の作品はプロットの意外さが売り物である。この人が真犯人かという驚きがある。そのために、再読するのはかなり辛い。シムノンのメグレシリーズはこれと比べると地味である。あまり、劇的な展開はない。メグレ警視は徒歩やタクシーを頻繁に使う。動きが地味であり、プロットの展開もだいたい予想できる。それゆえに、何回でも読むことができる。再読が可能だという意味で、メグレシリーズは面白い。なお、フランス語が平易であるので、フランス語の実力を身につけるにも好都合である。

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