異文化の森へ

Trouble follows me を読み終える。


Ross Macdonald によるTrouble follows me (A Mysterious. Com Book)を読み終えた。1946年に書かれた本である。日本に情報を売るスパイ組織の物語である。前作のThe Dark Tunnel では、ナチスドイツのスパイ組織の物語であったので、今度は日本のスパイ組織の物語だ。場所の設定もホノルルやサンディゴ、ロスアンジェルスと西海岸に近い場所にしてある。両方合わせて、きわめて愛国的な小説となっている。当時の時代風潮を考えると当然か。

小説の構造は、まるでアメリカのドラマを視聴しているみたいだ。次から次と場面が変わり、登場人物も次から次と出てくるので、本の余白に登場人物の名前とその人がどのような人物であるか簡単なメモを記しておかないと分からなくなってくる。質よりも量で押し切っているという印象がする。

これがイギリスならば、特定の数の主人公の内面が深く追求されてゆき、登場人物達の闇が次第に明らかになってくる方法が使われるだろう。実は、Ross Macdonald 最後の作品では、その手法が取り入れられていて、作品に深みをつけている。

ネタバレを申し訳ないが、主人公が一番愛した女が実は邪悪な犯人であったという設定は、Ross Macdonald 、いやミステリー作家たちの好むどんでん返しである。最初から、私は、「もしかしたらこの女が」とも思っていた。それくらいこの女性は immaculate なイメージがあった。それゆえに、最後のどんでん返しはやや不自然な感じもする。それならば、伏線もいくつか入れておいてくれればとも思ったが、伏線が何もないがゆえに、読者には、このどんでん返しが有効なのである。

Ross Macdonald は展開の意外さで持っている。それゆえに、一度読むとあまり再読したいという気がしないのだ。しかし、SimenonのMaigretシリーズではあまり複雑な展開はない。単純な話が続くので、それゆえに何回でも読みごたえがある。そんな逆説がなりたつのである。

 

モバイルバージョンを終了