異文化の森へ

The Far Side of the Dollar を読み終える。


Ross Macdonald のThe Far Side of the Dollar (Vintage Crime/ Black Lizard, 1992)を読み終えた。このところ、 Ross Macdonald の本をたくさん読んで、同工異曲だと少々飽きてきたところだった。それで、しばらく彼の本を読んでいなかった。久しぶりに読んだのだが、これまた迫力がある本だ。傑作だ!

父を探す少年の物語だが、複雑な家族関係と、そして女の寂しい生活が描かれている。人間の心理を知り尽くした巧者による筆致だと思う。ネタばらしとするわけにはいかないのだが、中身の話しはできない。とにかく読んでください、と言うしかない。

タイトルは dollar が使ってある。富豪の夫妻が金で何でも買える、と思っているが、実は金以上に大切なものがあるということの暗示でこのタイトルが使ってあるようだ。 

語法関係で気づいた点を2,3点述べていきたい。

(1)talk/say    “You talk a lot without saying much.”   “You say even less. But you’ll talk, Sam.”   (p.57)二人の男が言い合っている。say 実質ある中身を話す。talk 中身のない話しをまくしたてる、というような意味だ。訳すると、「あんたは何も教えてくれない。ただ、でまかせを言っているだけだ」「あんたこそ、俺以上に教えてくれない。でも、サム、教えてくれるよな」という風になるかな。talk/ say にはこんな言語的な意味の違いがあることは知らなかった。

(2)As a matter of fact, he helped me through college and got me  a job at his broker’s. I owe him a lot. He’s treated me like a father.”(p.70) この下線部の訳だが、「父のように接してくれた」である。ここは like a son としてもいいのだろうな。その場合は、「自分を息子のように接してくれた」のような訳だ。like という副詞節が主語にかかる場合と、目的語にかかる場合があるということだと思う。

(3)Brown was a man of better than medium size, physically powerful, not young, not old. (p.80)  下線部だが、自分ならば、a man of bigger than medium size としてしまう。「大きい」から「よい」という風に書いてある。これも作者の癖だなと思う。

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