異文化の森へ

The Barbarous Coast を読み終える。


Ross Macdonald の The Barbarous Coast を読み終えた。いままでに、この著者の本を5,6冊ほど読んだが、これが一番面白くない。納得できない本であった。でも、まあ、標準以上のできばえだとおもうが、彼の他の本と比べるとできばえは劣ると思う。最後は例のごとく意外な犯人になるのであるが、それまでの流れがかなり不自然すぎる。動機がどうもぱっとしない。

表紙の水着姿の女性もボクシングでノックアウトされた男性の写真も中に展開する話とは直接関係はない。タイトルの Barbarous Coast もあんまり関係ない。もっとも話しが最初から分かってしまうようなタイトルはミステリー作者は付けないのであるが。

おもしろと思った箇所は、彼が黒人の青年と話しをする場面がある。夢と希望を持って努力する黒人青年の言葉がある。I realized I didn’t know who I was.  I wore this kind of mask, you know, over my face and over my mind, this kind of blackface mask, and it got so I didn’t know who I was.  I decided I had to find out who I was and be a man.  If I could make it.  Does that sound like a foolish thing for a person like me to decide.  それに対して Archer は It sounds sensible to me. (p.169) と答えている。不健康な匂いの立ちこめるこの小説の中で、一箇所だけ爽やかな風が吹いたように感じた。

作者は心理学に詳しくて、時々人の心理を細かく描写する。自分にはとうていでき得ない離れ業である。人の悲しみや受難、嫉妬、野望や打算などが、うまく表現されていると感じる。読んでいて決して楽しいものではないが。

さて、次の彼のどの本を読んでゆくか。

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