異文化の森へ

The Wycherly Woman を読み終える。


Ross Macdonald のThe Wycherly Woman を読んだ。ぐいぐいと内容に引きずり込まれる。やめることができなくて、今日は今までずっと読んでいた。夕方の5時頃、ようやく読了した。最後の段階で、Archer はある一つの秘密をしまい込む決意をした。そしてその秘密を知る人々はすべて死んでしまった。Archer がその秘密を他の人には伏せることで、残った人々はすべて幸せになるのだ。彼は a private detective であるので、すべてを明らかにする法的な必要性はないのだ。

最後は余韻が長く残る話しであった。人間心理を深くえぐり出す筆者の力量に驚いてしまう。

でも一箇所だけ大きな欠点があるとしたら、娘が母親のふりをしたら、それに Archer はどの人物がだまされるか。年齢を20歳をごまかしているのをArcher が見抜けないか。この点がこのストーリの難点である。

書き方が上手だと思える箇所をいくつか述べたい。Helen が魅力ない女性で、子どもができない。そして胸がないことを述べている箇所だ。”God chose me to make me barren.” Her finger crept down from her throat to her meager breast. (p.186)  barren という言葉を印象づけるのに meager breast という言葉が結びつく。このあたりの描写は上手だと思う。

She had a steaming cup in her hand, and a white milk moustache on her upper lips. (p.210) 「上唇の周りにミルクが口ひげのようにくっついていた。」ここでは、mustache ではなくて、フランス語風にmoustache とスペルが記してある。自分はたまたま、Simenon のMaigret et les petits cochons sans queue を読んでいる。そこにもmousatache が口の周りについているものを形容するのに使われている。

さて、Jules が船に乗ってやってくる。船の先頭に立っている。そして段々と近づいてくる。Il se tenait toujours immobile, debout au-dessus de l’étrave qui fendait l’eau et s’en faisait des moustaches d’argent. (p.65) 「彼は身動きしない、船首に立っている。その船首は水をかき分け、銀色の泡を飛ばしていた」という訳か。ここで、s’en faisait のen はeau を指すのであろう。水を飛び散らして、船首の部分の周りに泡が銀色の口ひげのようになって飛び散るという光景を形容している。

英語とフランス語での語感が同じであることを示している。あるいはこの用法は一方が一方から輸入されたのであろうか。

Archer がガソリンスタンドに行く。そして給油をしてもらおうとする。車を女性の代名詞で表現している。このことも面白い。

“Fill her up. She ought to take about ten.” (p.219) この部分だが、数字の10 は十ガロンか十ドル分のガソリンのどちらを示すのか。そのあと、係の人が、”The will be five-oh-nine.” と言っているので、5ドル9セントということか。1ガロンは3.8リットルなので、38リットル入れてくれと言っているのだろう。けっこうたくさん入れるなと思う。

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