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Ross Macdonald のThe Blue Hammer を読み終える。面白い。自分は他の仕事をしなければならなかったのだが、これに読みふけってしまった。3日ほどで読み終えてしまった。
タイトルのThe Blue Hammer だが青いハンマーではなくて、恋人の首の青い血管が脈打つ様を意味しているのだ。これはかなり凝ったネーミングである。
さて、ストーリーはどんでん返しの繰り返しで、あらすじを追ってゆくのが大変だ。いくつもの家庭の不幸が絡んでいる。アルコール、芸術家としての才能、女の奪い合い、嫉妬、父と子の関係、などが複雑に絡んでいて、飛ばし読みをすると話しの流れがつかみづらくなる。人名もたくさん出てくるので、ノートに書いておかないと、どんな人であったのかも分からなくなる。
これは、一流の作品であるのは事実である。初めから最後まで流れがよどむことがない。冒頭で、盗まれた絵を取り戻すということから場面が始まるのだが、すべての人がこの絵に関心を持っている。その理由が分からなかったが、だんだんとその絵の持つ意味が分かってきた。
これだけ、手の込んだストーリーを書ける筆者の力量に敬服せざるを得ない。なお、これは彼の最後の作品で、これ以降は彼はアルツハイマー病に侵されていったそうだ。彼の頭脳が病に冒される前に一瞬大きく光ったのだと考えたい。
語彙で一言、昔美人であった Mildred Mead を形容する場面だが、… a woman who had once been small and beautiful and was still handsome. (p.263) と述べている。英語圏では、small とbeautiful が容易に結びつく概念であること。もはやbeautiful でなくなった女性でも依然として handsome ではありえること、そのことを教えてくれる文である。この小説では、女性を形容して handsome が何回か出てくる。この倍は、女性に対する最大級の褒め言葉ではないことも分かった。なお、男性をhandsome と形容している例は、Ross Macdonald をこれまで読んだ限りでは、まだ現れていない。
次は、彼の The Wycherly Woman を読む予定だ。