異文化の森へ

ペストの終わりの兆し

2015-03-02

La Peste を読み続ける。冬になった。ふと、ネズミの姿が見えてきた。ペストの始まりはネズミの大量死であったが、その再来はペストの終わりを示すのか。no. 4209あたりから、ペストの終焉の兆候が現れてきたとある。人々の顔にも希望が見えてきた。このあたりからは、読んでいる私も安心してくる。でも、人々は以前と同じ生活に戻れるのか?

しかし、Tarrou が感染したようだ。彼は疲れを感じるようになり、そして、彼の carnet もそこでストップするようだ。彼が現代に生きていたら、ブログに毎日起こったことを細かく投稿したであろう。観察者としての Tarrou 自身にも病魔が襲いかかる。医者が彼に容体を聞くと、彼は力なく、je perds la partie (no. 4459)と言う。自分がこの病気で死ぬことを予期しているようだ。

ところで、医者の仕事は怖いなと感じる。よく感染しないで仕事をすることができると思う。感染しないように万全の備えをしているのだろうが、やはり患者から病気をもらうこともあるだろう。知人の医者で患者から肝炎をもらって苦しんだという話を聞いたことがある。高収入だが、リスクも高い仕事が医業である。

ペストは何を象徴するか。この本が発行されたのは、1947年であるから、ナチスを象徴していると考える評論家が多いようだ。たしかにナチズムはフランスに襲いかかり、数年ほど支配して、そしてノルマンディー上陸以降の戦いでフランスは解放された。ペストとナチズムは重なる要素もある。しかし、カミュ自身はそのことを否定したようだ。もっと、深い、人間存在の不条理を示しているとの説もある。

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